世界が変わった日

 まさかねえ、自分が人の親になる日が来るなんて、人生何がどこでどうなるか本当に分からないものです。人はみな平等に年を取るわけだし、否が応でも成長を強制されるものではあるけど、それでも永遠に変わらない部分が良くも悪くもあるんじゃないかと思っていたんだけどね・・。
 幼年期の終わりみたいものがもしあるとしたら、僕がそれを感じたのは仲間に子供が生まれた時だったと思う。それまでは社会や世の中に対し、僕は「セブン」のサマセット刑事よろしくかなりうがった見方をしていたのだが、イソに杏ちゃんが生まれたとき、
「そんなことを思っていも仕方ない」
「そもそもその世の中を構成しているのは僕ら自身である」
ということに気づき、恥ずかしいけど本当に心から
「この世が平和で秩序正しく回って欲しい」
と思ったんだよね。今思い返しても恥ずかしいんだけど、自分の心の中の価値観を揺るがすような、大きな変化だったのだ。
 あれからだいぶ時間が経ち、ほかの仲間にも次々と子供が生まれ、そんな中で巡ってきた僕の番。運よく立ちあえたんだけど、話に聞く様な「生命の神秘を感じた」、「価値観が逆転するような瞬間」、「涙が自然とこぼれる」事は特になく、とにかく全てが無事終わりホッとしている、が正直な感想である。思ったことは
「出産は戦い」
「男は何の役にも立たない」
「あんなことを低リスクで行える現代の医療はすばらしい」
ということで、親としての実感や自覚も相変わらずなく、陣痛待ちである笑。でも、焦ることなく、ビビることなく立ち会え、冷静にその瞬間を受けいれることが出来たのは多分、杏ちゃんのときに自分の考えが固まったからかなあ、なんて思っている。
 とはいえ、今日から僕の世界は決定的に変わった。ニュースを見ていると世の中は傾いていてこの先がどうなるか分からないけど、それは昔も今も、そしてこの先もきっと同じなはず。僕らには未来を信じるしかないし、それが親として、人として出来る最初の一歩なんじゃないかと思う。

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