ガブリ

 タイソンがホリーフィールドの耳を食いちぎったとき、僕は
「なくはないな」
と思った。それは、ボクシングは一つの芸術でありながらも、もう一方では極限までに本能的な攻撃性を開放する「スポーツ」だからである。昔ここにも書いた僕のボクサーの友達に
「どうすればパンチをされたときに背中を向けずにいられるか。普通は恐怖心で背中を向けるものじゃない?」
ときいた時に、
「背中を向けたほうが危険であるこをを本能的に理解しちゃうんだよね」
と言っていた。なにやら思考の前にたつ何かがあるようで、ボクシングなどの格闘技ではそれが必要なんだそうだ。それだけでなく、誰かの顔を殴るという行為にもそれに似た攻撃性が必要で、なんの躊躇もなく相手の顔めがけて力一杯拳を振れるようにになるにも時間がかかるそうだ。社会生活の中で普段は抑えているそれらの攻撃性を極限までに引き出すわけだから、噛むこともありえるなあ、と思ったんだよね。グローブがなかったらつかんでいるだろうし、手に何か持っていたら投げていただろうし、もっと距離があったらタイソンも蹴っていたでしょ、きっと。攻撃性の開放だからね・・。この攻撃性って誰の中にもあって、もちろん僕の中にもある(残念だけど)。プレイ中に時折ソイツが心の中からもれそうになる時があるんだけど、それでも「コイツ噛んでやる!」と思ったことは一度もない。スアレスの噛み付き事件ってなんか、理解しにくいんだよね。理解しにくいだけに同情の余地が全く生まれず、自業自得の罰だなあ、今思っている。スアレス選手はよっぽど変な奴なのだろうか。

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