突然

 母の弟が亡くなった。四兄弟の末っ子、3番目である母にとっては可愛い弟であった。僕はこっちに来てから一度も会っていないから、もう20数年顔を見ていないことになるのか・・。僕の弟たちもまだ小さかったら、恐らくおぼろげな記憶しかなく、僕でもそこまで記憶が鮮明というわけではない。それでもジーンズが格好良かった長い足とハンサムな顔は覚えていて、20年も見ていないのにやはり悲しいものは悲しい。
 父は叔父さんととても仲が良かったようで、亡くなったこと知らされたときに「20年も会っていなくて、今の顔をしらないことが逆に良かった」と言っていた。イメージが付かないこと。和らげるまではいかないが、悲しみの方向をずらしてくれるというか、輪郭をぼやけさせてくれるというのか、言いたいことは良く分かる。55歳。まだ若いよね。
 普段は存在を思い出しもしないのに、いざいなくなると心に寂しさを感じるこの勝手な感情。これってなんだろう。毎回思う。普段思い出さないのに、いざとなると不在感に襲われる・・。人間の心は本当に不思議だ。
 悲しみにくれている母ではあったが、孫もいるんだから強くあらねば、と気丈に振舞っていた。半分はきっと本当のことだろう。遠く離れたところにいる今は出来ることはない。目の前、今必要とされている部分に生きがいを感じてくるようにと願っている。弟を亡くしたが、孫がいる。家族はつながりであることをまた強く感じた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。