記憶の片隅に

 遅ればせながら「君の名は。」を鑑賞。新海誠の作品は全部観てきたけど、「メジャーヒットのために作家性を捨てた」みたいな評論を読んだこともあって、見るのがちょっと怖かった。が、大ヒットに納得の出来る完成度で満足である。特に今回のメインのテーマになっている「記憶」について考えさせられた。
 どんなに強烈な体験でもいずれ薄れていくのと同じように、どんなに大事な思い出もやがては消えていく。その残酷さというか、切なさを思いださせてくれるのがこの映画だよね。昔の写真を見るとその時の事を思い出す事は出来るけど、当時の気持ちや空気を思い出すことは難しい。さらに、その時の後に重ねた記憶もたくさんあるわけで、それらを通してのその時だから、もうその時の心の再現は不可能なんだよね、良くも悪くも・・・。この映画ではもう一歩踏みこんでいて、「ずっと何かを思いだせそうだけど、忘れているから思い出すことが出来ない」という感情と「いっそう忘れたいけど、何を忘れたいか思い出せない」というところもまで行っている。そう思うと、なんとなく中高生・若者向けな映画という気もするけどそんなことはなく、僕みたいな中年でも全然観れる内容である。気になっている人は見た方がいいかも。

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