ドラマは日常

 信号待ちをしていたら、一軒家から大学生ぐらいの女性が出てきた。リュックを背負った彼女は寒そうにマフラーで口元を隠しながら、自転車に乗る準備をしている。すぐその後に年配の女性が出てきた。お母さんと思われる年配の女性は薄着で、とても寒そうな様子。娘を見送るためにちょっと外にでた、という恰好である。大学生の彼女はお母さんと挨拶を交わし、小さく手を振ってから自転車を漕ぎ出し横断歩道を渡っていった。これから大学にでも行くのかなあ、なんて思いながらボーっと見ていたけど、気になったのは娘の背中をずっと見送っているお母さんの姿であった。ずっと見ているのである。娘が離れてもなんとか視界の中に入れるために角度を変えたり、ちょっとずつ移動しているのである。お母さん、すごく寒そうだけど大丈夫か?なんてこっちは勝手に思ったんだけど、震えながらもやはり娘への心配のほうが大きいようで、最後まで見送ろうとしていた。母の愛は偉大だなあ、なんて考えていたらふと
「この風景、前にもみたことある」
ということを思い出した。しかも同じ場所で、だいたい同じ時間、同じ親子。その時も娘を見送るお母さんの姿があまりにも印象的で、ちょっと感動的ですらあったんだよね。ただ、あの時の女の子は制服姿だったから、中学生か高校生だったに違いない。おそらく3-4年前のことだと思う。その間の時間、娘が家を出て行くたびに最後まで見送るお母さんの姿を想像した。
 一日一日は日常だからたいした事の用には思えないけど、そういう日常の積み重ねが僕らの日々作っているのかあ、なんて朝から思ってしまった。