映画の力

 年末から年始にかけて本当に楽しみな映画が多い。
12月は
「007 スカイフォール」
「ホビット 思いがけない冒険」
「レ・ミゼラブル」
1月になると
「96時間 リベンジ」
「テッド」
その後にも「クラウド・アトラス」や「キック・アス2」、リンカーンを題材にしたスピルバーグの新作もあって、何かから見ようか?状態なのである。すごく楽しみなんだけど、今映画館でかかっているこの一本「アルゴ」も最高にいい一本なんだよね。すでにあちこちで話題になっているし、TVや雑誌で紹介されているのを見た人も多いと思う。
 1979年のイラン革命の際に、アメリカ大使館が過激派に占拠されるが6人の大使館員が混乱に乗じて脱出。カナダ大使の自宅に身を隠した。逃げ出して帰国したいのは山々なのだが、アメリカ人と見ればその場で射殺されるという空気、外に出ることは出来ない。さらに大使館員の名簿が相手方に渡っており、6人が隠れていることがいつバレるのかも分からない。そんな彼らを救い出すために、CIAの人質奪還のプロが立ち上がる。
 このCIAの人がベン・アフレックで、彼が考え出した作戦が「6人をカナダ人の映画スタッフに仕立て上げて堂々と空港から出獄させる」という作戦であった。これが実話だからビックリである。そのため、本当に映画が存在している様に見せなければならない。脚本を選び、事務所を構え、記者会見をし広告も出す。どれだけこの映画が本当に存在するかを見せるのが成功のポイントで、ありもしない映画作りに右往左往する大人達がすごく滑稽に映る。しかもこれが棒にも引っかからない、当時流行っていたスター・ウォーズを丸パクリしたようなB級映画なんだよね。
 映画は緊張の連続。実話だから作戦が成功し6人が無事救出されるのは分かっているのだが、この作戦はごとごとく行き詰まり、方向転換を余儀なくされまったく予定通りに進まない。その度に観ているこっちはドキドキ、ハラハラ、本当に上手い演出なのである。
 この作品のもう一つのいい所は「映画愛」を訴えている所である。彼らが最後の最後の難関に立ち向かうんだけど、そのピンチを助けるのは
「映画を必死に語る」
事なのである。その作戦に最後まで懐疑的だった人が必死にこの映画を語るんだけど、その時、存在もしないこの偽映画(しかもB級)が実在するんじゃないか、本当に作られるじゃないか?という気がして、なんていうか、その一瞬だけ命が宿った気がするんだよね。劇場にかかっても誰もみないだろうけど(笑)、もうそのシーンで涙涙・・・。おすすめです。