桜桃の味

 キアロスタミ監督が亡くなったらしい。名前は一度も覚えられなかったけど、代表作の「桜桃の味」は忘れられない一本である。
主人公の中年男が、ずっと自分の自殺を手伝ってくれる人を探してまわるという話である。
「私は、夜に睡眠薬を飲んで穴の中に横たわる。そしたら君は次の朝に来て、穴の中の私を呼んでほしい。返事がなかったらそのまま埋めてほしい」
というのがその中年の男の要望なんだけど、誰も手伝ってくれない。怖いから、宗教的観念に反するからとか、理由は様々なんだけど、ついに手伝ってくれる老人を見つけ・・、という映画である。おそらく多くの人が「感動した!」とか「涙が止まらない」的な紹介をすると思うけど、実は意味がよく分からない困った映画なんだよね。特にあのラストには意味があるのかないのか、あるとしたらそれがどんな意味なのか。評論家や知識人は難しい御託を並べれたいけど、本当か?と感じていたのを思い出した。僕は忘れらないのはまさにそこで、なんだか哲学的な意味を込めて物を語とを難しくとらえようとする風潮?とでもいうのかな、そこがちょっと引っかかっていたんだよね。深読みや謎解きの楽しさは僕も好きだけど、これはちょっと違う気がしたんだよね・・。
 映画的にはずっと静かな感じで、イランの乾いた風景は美しいし、老人が最後にする長い説教もいいんだけどね。僕にとってはちょっとした気持ち悪さを覚えた一本なんだよね。英語字幕だけどyoutubeに丸ごと上がっているから、見れる人は見てほしい。