この世界の片隅に

夏になると日テレで必ず放送される「蛍の墓」が嫌いな僕である。何度か見ているけど、そのたびに嫌な気分になることもあって、もう何年も見ていない。が、僕の思いとは別に、この映画は夏の風物詩になり決まって放送されている。あの時期にこういった題材を流すのはいい面もあるんだろうけど、それにしてもずっと同じ映画を流すのは芸がないんじゃないか?そろそろ次の作品があるんじゃないか?と思っていた所にこの「この世界~」を知った。「この世界~」はクラウドファンディングで作られた映画であり、テレビ局主導ではない。そのため、どこかのチャンネルが流したいのであれば放映料を払えばいいだけのこと。この先に4チャン「蛍の墓」、違うチャンネルで「この世界~」が同時に放映されることがあるかも知れない。

そうなったらいいなあ、なんて思いながら「この世界~」を鑑賞したんだけど、完全に僕が甘かった・・・。「この世界~」はたしかに最高に面白く最高に可愛らしい作品なんだけど、同時に残酷であり見ていてつらい作品でもある。

戦時中の人々の生活を描いているという説明が多いよね。たしかに当時の生活は大変。水は汲んでこないといけないし、料理を作る時は火を起こすことから始まる。火の強さも薪の量で調整しないといけない。洗濯はもちろん、手作業。服を作ることだってすべて自分でやるのだ。もう、生きているだけで忙しいんだよね。それが丁寧に描かれていく。そして綿密に想像させられるからこそ、当時の人立が「なにを失ったか」がこっちも良く想像でき、それがとてもつらい・・。僕は今まで本当にたくさんの映画を見てきたけど、二回目の視聴がおっくうだったのはそう何回もない。

馬鹿みたいだけど、見終わってから二回ともすぐに息子の寝顔を見に行ってしまった。寝息を確認して(笑)、本当に「少なくともこいつが生きている間は平和であって欲しい」と思った。具体的なことはなくとも、きな臭い空気が流れている今である。その空気が日常を脅かさないことを切に願う。この映画を見ると感じるけど、変化ってちょっとずつ来て突然始まるんだよね・・。