先輩後輩

 昔、野球の監督がきつい練習を僕らにさせるときに、
「俺はこれで上手くなったから、これは正しい練習だ。上手くなるかどうかはお前ら次第でもあるけど、少なくともやり方としては間違ってはいない」
と説明してくれたことがある。当時は精神論が通用する最後ぐらいの時代で、水を飲ませないで練習させるとかも普通にあった。僕はその練習は最高に嫌いだったけど、監督の「自分の経験から来る」という部分に不思議な説得力を感じていた。簡単にいうと
「黙って俺の言うとおりにしろ」
なんだけど、それだけじゃないような、理論と愛情みたいなものを同時にそこに見ることが出来た。まだ子供だったけど、その言葉は僕のなかでとても印象深く残っていてる。
  
僕も「先輩」という立場になって久しい。今まで体育会系世界に身を置いたことがないのでどう振る舞えば良いのか分からないが、「経験」というのはどうやら価値があるもので、時々その経験の中から「これを今後輩に伝えねば」と思うことがある。が、これがそう簡単にはいかない。どういう風に伝えれば真意が伝わるのか、気持ちが伝わるのか、頭の中でシミュレーションをしているうちにタイミングを逃してしまうこともあれば、理解してもらえない空気に負け諦めることもある。コミュニケーションと同じで歩み寄りが大事なんだろうけど、これも鍛えるべき技術の一つなのでは、と最近思っている・・。