ゼロ・ダーク・サーティ

zero-dark-thirty-posterゼロ・ダーク・サーティ
監督 キャスリン・ビグロー
出演  ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク 、ジョエル・エドガートン

 ビンラディン死亡の一報が流れた時、ああ、そうなんだーと案外冷めた反応だった事を覚えている。9.11の直接的な被害者では限り似た反応の人が多かったはず。僕自身もそうで、まだ追いかけていたんだと思ったの共に、オバマが発言した
「正義はなされた」
の一言にアメリカの執念というか、そりゃあ地獄の底までも追いかけるか、と思ったのを覚えている。

 前評判通りの内容で、すごく良かった。特に最後の30分は、前作の「ハート・ロッカー」の爆弾解体のシーンのあの緊張感がずっと持続している感じで片時も目を離せない状態。ビン・ラディンを殺したという史実はみんな知っているけど、「どう殺したの?」は誰も知らないため一つの注目ポイントだったため、尚更だ。配役も良く、最後まで飽きさせない展開は見事。
 すごく面白かったんだけど僕は主人公の事が最後まで好きになれず、その部分でなんだかもやもやが。最初から最後までビンラディンの追跡にしか興味がなく、内面もあまり描かれない。襲撃された後に変化があるかなと思ったらそうでもないし、終始同じテンションなんだよね。もう嫌だとか疲れたとか、あれば良かったと思ったんだけどね・・。同僚が事件に合う時に内面を少し見せるが、その後も変わらず。まあ、最後にシーンで説明される様に彼女にはそれしかなく空っぽなのだ。「ハート・ロッカー」でも主人公は家に帰ってからスーパーのシリアル売り場の中で何もない自分を発見する。ガキに「歳を取ると好きなこともどうでも良くなっていく」って話すんだけど、彼にはまだ一つだけ爆弾解体があり、最後にはそこに戻っていく。それに引き替え彼女は行く所もなく帰る所もなく、する事もないんだよね・・。明らかに演出なんだろうけど。